【レビュー】映画「福田村事件」- 震災後のデマにより実際に起こった行商団9人の虐殺事件

U-NEXT(ユーネクスト)のレンタルで映画「福田村事件」を観た。

福田村事件は大正12年9月6日、関東大震災の5日後に当時の千葉県東葛飾郡福田村で起きた、香川から来た薬の行商団の9名が地元の自警団によって殺害された事件だ。監督は「A」や「FAKE」、「i-新聞記者ドキュメント-」などドキュメンタリー作品で有名な森達也。

出演は井浦新、田中麗奈、永山瑛太、柄本明、ピエール瀧、水道橋博士、東出昌大など豪華なキャスト。

震災の混乱などで関東各地で「朝鮮人に気をつけよ」「夜襲がある」といったデマが広がり。自警団が香川からの行商を問い詰め、言葉やイントネーションが違うなど言いがかりをつけ、その結果集団で9名を殺害してしまうという内容だ。異常なまでの緊張と興奮状態がよく現れていて、特に水道橋博士演じる自警団の一人「長谷川」は強烈だった。彼は帝国在郷軍人会(退役軍人などで結成された組織)で故郷に戻り自警団として活動していた。そのため、ある種の誇りや使命感のようなものが制御できずヒステリックな状態に陥り判断を誤った。「制御不能」な状態が村全体を覆った形であった。

先頃の令和6年能登半島地震の際にもXなどを中心にSNSで人々の不安を煽るような偽情報が多く投稿された。そういった情報が拡散され救助活動や避難に混乱が発生する、村で起きた「制御不能」な状態が常に起こりうる構造になっている。いつの時代においてもおそらく起こってしまうことなのだと実感させられる。

映画は単なる娯楽を超えて、我々の心の奥底に潜む深い疑問に火をつける。『福田村事件』はまさにその種の作品だ。この映画は、表面上は解決されたかのように見えるが、実際には多くの謎と疑問を残す歴史的事件を描いている。監督の緻密な手法と俳優たちの圧倒的な演技により、観る者は事件の真相に迫る旅へと誘われる。歴史的な記録映画。

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