【Column】#016「夜光虫」- Noctiluca – 白と水色のカーネーション

日曜日、友達と海に行った。

キレイな海が見たいって言うから。
キレイな海を探したけど、東京から日帰りで行ける海はどこも同じような海だ。

日が暮れる間際の砂浜に座って波の音と呼吸を合わせ、
ぼーっと水平線を見てた。

僕が小さい時、ただベンチに座ってるカップルを見て
「あのお兄ちゃんたち何が楽しいのかな?」って母に聞いた。

「時間が進むのがもったいないから息を止めてるんだよ、だから何も話せないの」

意味はわからなかったけど、しばらくは大人になって息を止めれば時間が止まると思ってた。

今の僕たちはそんな風に見えるのだろうか。

僕はとにかく学校に行きたくなかった、先生が怖い、クラスメートが怖い、給食は食べれない。
とにかく何も自信がなくてそこにいるのが恥ずかしかった。日曜日が終わっていくのが憂鬱で仕方なかった。

大人になったら、彼女とかできるのかな?結婚とかできるのかな?ってすごい不安だった。
裸になったり、キスしたりって恥ずかしくないのかな?って。

クラスメートに1999年で地球がなくなるって言われて帰ってから母に
「僕は2000年で20歳になるけど1999年で世界が終わるから成人式出来ない」って言ったら
「みんな一緒に死ぬならいいじゃん」って言われた。小さい時は何でも信じてしまってた。

そうやって僕たちは「あー」とか「うー」とか言いながら、夕日が沈んでいくのを見てた。

日が暮れ、浅瀬に蒼白い光がぼんやりと浮かぶ。幻想的でなんだか、いやらしい光。

この光は夜光虫っていうらしい。

見たことない優しい光は風に揺れるカーテンみたいだった。

彼女が砂を両手に集めて指の隙間からサラサラとこぼした、
砂が水面にたどり着くと、蒼白い光の輪が広がった。

そういう姿を見ながら、この人と10年くらい前に出会ってたら
恋人同士になりたいって思ったのかもしれない。

でも、もう僕らは恋人同士にはなれない。

僕らが勝手に作った特別の中で追いかけっこしているだけだから。

お互いがこれ以上行ったら戻ってこれない、
そういうギリギリのところで動かない。

独身で恋人のいない同士の男女が夜の海で
夜光虫に囲まれながら戯けている姿は笑えると思う。

ただ蒼白い光の中に立つ彼女を見て、もし今日が最後ならって思ったら苦しくなった。
ズルいんだ。

僕らはもう友達でも恋人でもない、名前のない別の何かになってしまった気がした。


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